私のお墓づくりへの想い

「ご先祖を尊ぶ心」を大切にするお墓のあるべき姿とは

 私がこの業界に入って20年以上になります。
 当時皆さんは、何の疑問も持たずにお墓をお建てになり、お寺様に開眼供養(お性根入れ)をしていただき、お経の意味も解らずに(想像ですが・・・)、手を合わせるだけで心の安心が得られたのではないかと思います。それは先祖供養が無意識のうちに日本人の心に融け込んでいて、お経の意味よりも「ご先祖様を供養したという行為」に安心できたのだと思います。
 ただ、この頃は多分に変わってきました。
 先祖代々という「家」意識の希薄化、少子化による祀り手のいないご先祖様やお墓、また、あふれんばかりの情報化社会の中で、お客様も我々も「お墓とは何」と意識せざるを得なくなったのです。
 お墓の形においても、ここ数年の伝統的な和型から洋墓や自由発想のお墓への移行は、その意識の変化による結果だと思われます。
我々の石材業界も15年ほど前より、外国から製品(完成品)が非常な勢いで入るようになりました。変わりつつある業界を対象にセミナーが開かれるようにもなりました。私も聴講いたしましたが、そのセミナーによると「価格や石の種類(産地)を明確にする」「明るく入店しやすい店づくり」「ちらしやDMの活用」等々、値段や石の種類を表示している石屋さんは、当時ほとんどありませんでしたから、セミナーの内容は非常に新鮮に感じました。
 その中で特に私の頭の中に残ったのは、「ホームセンターで花を買うような感覚、気楽な、気さくな感覚(で墓石を売る)」という言葉でした。
 それは、入店しやすくてお墓のことがよく分かる店のイメージづくりが目的のセミナーでした。その後、セミナーで勉強したような店づくりをする石屋さんも増え、異業種からの参入などもあり競争が次第に激しくなっていく中で、お墓というものが「供養」から「生きてきた証の記念碑」または「思い出碑」、もっと言えば「日用品化したもの」に変化し続けている、と感じるようになりました。
 今まで行われてきた「供養」という行為から、お墓がどんどん離れてきている現実を目のあたりにすると、以前のセミナーで聞いた「ホームセンターで花を買うような感覚・・・」という言葉が現実化する時代になってしまうかもしれないと考えてしまいます。お盆に向けて夏場のキャンプ用品と、お仏壇やお墓が同じように並んで売られているのを想像して、強い違和感を抱いてしまうのは私だけでしょうか。

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